
Q:相続税が払えなそうな場合、どうすれば良いの?
A:代表的な対処法として、延納手続き・物納手続きがあります。
遺産相続をした場合、相続財産がたくさんあると、多額の相続税がかかることがあります。相続税は、相続財産の評価額に応じて課税されるためです。
相続財産の内容が、現金や預貯金、生命保険金などの簡単に換金できるものであれば、それらを利用して相続税の支払いに充てれば良いですが、不動産や株式などの換金が難しいものの場合には、現金で相続税を支払うことが困難になるケースがあります。
不動産を相続した場合には、何とか不動産を売らずに相続税を支払いたいケースも多いです。
このように、相続税を支払えない場合、いくつかの対処方法があります。
代表的な方法が、延納と物納ですので、以下で個別に解説します。
延納手続
延納とは、相続税の支払いが難しい場合に、何年かにわたって分割払いする方法のことです。
ただし、延納をすると、相続税以外に利子税が課税されることになりますので、全体的な支払い額は増えますし、担保も必要になります。
延納をするための要件は、以下のとおりです。
●相続税額が 10 万円を超過している
●金銭での納付が困難な金額である
●「延納申請書」と「担保提供関係書類」を期限までに提出する
●相当な担保を提供する(税額が100万円以下、延納期間が3年以下の場合、担保は不要です)
延納の担保に使える財産は、以下のようなものです。
●国債、地方債、社債、その他の有価証券
●土地、建物、立木、登記された船舶など
●鉄道財団、工場財団などの財団
●保証人
物納手続
物納とは、不動産などの物をもって、直接相続税の支払に充てる方法です。物納は、延納制度を利用しても相続税を支払うことができない場合に利用できます。
ただし、物納をすると、評価額が低くなる可能性があり、損をすることがあるので注意が必要です。物納をする場合には、物納の対象の財産は相続税評価額で評価されます。たとえば、土地の場合であれば、路線価方式で評価されますし、小規模宅地等の特例の適用を受ける土地の場合には、その分の減額評価も行われます。
このことによって、物納を利用すると、市場価格よりも評価額が大幅に減額されてしまうおそれがあります。よって、土地で物納をするのであれば、自分で土地を市場価格で売却して、その代金で相続税を支払った方が得になる可能性が高いです。
物納を利用するための要件は、以下の通りです。
●延納によっても相続税を支払えないこと
●物納財産は、日本国内にある以下の財産であること(順位も以下の通りです)
第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債(短期社債等は除く)、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券
第3順位 動産
●管理処分に不適格な財産ではないこと
●物納申請期限までに、物納申請書と物納手続関係書類を税務署長に提出すること
そもそも物納を利用すべきか、利用するとしてもどの資産を物納に充てるべきか、またそもそも物納の対象にできるかという問題は大変難しいので、税理士に相談して決めると良いでしょう。